CHROME INDUSTRIES ART LTD. featuring NOA-

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流れを追い求めし者


筆やアクリルを巧みに使い、カリグラフィーの要素を含んだ"流れ"のあるスタイルでキャンバスを彩るNOA-。
音楽だけでなく観客までも作品の一部として投影するライブペイントを得意とし、ベースとするサンフランシスコ・ベイエリアでアーティスト活動を行っている。
同じくサンフランシスコを代表するCHROMEとタッグを組んで製作した限定バック"YALTA NOA-"でも、独自の世界観を展開。
コラボレーションバッグのリリースを記念したパーティの際に来日し、同イベントでも見事なライブペイントを披露したNOA-にインタビューを敢行。
頭でっかちになりがちの芸術の世界で楽しむことを忘れない日本人アーティストが、自身の作風やコラボレーションについて語ってくれた。




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----サンフランシスコ・ベイエリア在住とのことですが、もともとの出身はどちらなんですか?

両親は日本人ですが、生まれたのはアメリカのオレゴン州で、4歳のときに日本に戻って静岡で育ちました。大学に進学するかどうするかっていうときに「アメリカをもっと見たい」と思って、オレゴンのユージーンにある語学学校に行きました。


----そもそもアートに目覚めたきっけかとは?

小さい頃から絵を描くのが好きだったんです。それからグラフィティに出会って、アメリカで本物のストリートアートを見たことも大きいですね。サンフランシスコのかなりアンダーグラウンドなシーンを間近で見ることで、感化された部分も直接的なきっかけなのかなと思います。


----サンフランシスコ・ベイエリアに移住を決意するまでに至った理由を教えていただけますか?

オレゴンから近かったのがサンフランシスコで、友達と2人で行ってみたらOBEYやアッパープレイグラウンドの作品が街に溢れていたんです。その時の自分は、田舎から始めて都会に出て来たみたいな感じで「何だここは!?」っていう衝撃を受けて、この街に住みたいと思ったのが大きなきっかけですね。


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----NOA-さんが向こうで見てきたアートシーンと日本のシーンで違いは感じますか?

そうですね、でも日本もかなり良くなってきてると思います。描いてる層も大分幅広くなってきて地方でも描いている人が結構いるし、表に出てくる人も増えてきているので、違いはそこまで感じないですね。東京が一番盛り上がっているとは思いますが、福岡とか北海道とか、地方に行けば行くほどいろんな人に出会えるので、日本がダメというのは一切ないですね。もちろん、スタイルが独特っていうことはどちらにもあると思います。アメリカはアメリカなりの歴史があって、新しいものを生み出そうっていう力はアメリカの方が強いですよね。日本は流行り廃りもあるし、グラフィック要素というかデザイン的要素が強いと感じます。


----NOA-さんのアートワークにはカリグラフィーの要素も含んだ"流れ"がありますが、今のスタイルはどのように確立されたんですか?

結構アブストラクトな感じから始まっているんですけど、グラフィティの影響も受けていると思います。自分のスタイルを確立しようとして、何を使って描くのかっていう時に筆ペンに出会って、それからハマっていった感じです。何が出てくるか分からない感じというか、筆ペンは描いてる瞬間がとにかく楽しいんですよね。手を動かしている脳ですらも、手がどう動いているのか分からないところが好きなんです。結局その流れみたいなものを、自分がフォローしちゃうのが気持ちよかったというか。そういうのもあって、波に乗っている感じとか煙になっている感じは意識しています。


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----色の組み合わせが3色のものが多い気がするんですが、アートワークを制作する上でルールや法則みたいなものはありますか?

3色だとハイライトとモノトーンで濃淡的にもちょうどいいっていうか。ライブペイントは短時間の中で完成させなければいけないし、そういう部分もあると思います。アニメとかの配色も3段階4段階といった感じで、構造的には簡単にできているのも関係しているのかと。あまり色を増やすと時間がかかってゴチャゴチャしてしまうし、ラインは3色ぐらいがちょうどいいっていうのはありますね。4色になるとごちゃごちゃし過ぎちゃう気がします。実際は、特に決め事はないんですけどね。


----今回、サンフランシスコにかかる霧がテーマになったコラボモデル"YALTA NOA-"がリリースされましたが、このコラボレーションはどのように実現したんですか?

日本に戻っていた時ですね。グラビティーフリーとすごく仲良くさせてもらってて、食事会の時にCHROMEの人を紹介してもらったんです。それがインタースタイルの3日前で、ブースでライブペイントをするっていう話がそこで決まったのが始まりですね。インタースタイルの後、白いYALTAをカスタムしてほしいと渡されて、その過程でコンセプトがバシっと決まって、サンフランシスコにあるCHROMEの本社でも気に入ってもらえたんです。もともと友達のTシャツとか女の子の古いハンドバッグにピースを描いていたし、昔から好きでやっていた経験が活きたのかなと思ってます。なんかあまり考えずフローでやっちゃうので、自分自身も結構楽しめるんですよね。


----フリースタイルで出来るというところがライブペイントの魅力だと思うんですが、ライブペイントを続ける理由を教えて下さい。

単純に楽しいっていうのと、色んな出会いをくれるところも魅力だと思います。もともと音楽がすごく好きなんですけど、音楽って外に出て行かないと自分の中で完結してしまうので、新しい音楽との出会いも与えてくれるところも好きですね。自分にとってライブペイントは爆音で音楽を聴きながら、人とリンクする為のコミュニケーションツール的な意味合いがあります。


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----自身の作品を通して、オーディエンスに伝えたいことはありますか?

何かを伝えたいっていうことは無いんですけど、もっといろんな人に絵を描いてほしいですね。ただ好きで絵を描いていて、描いている時は自分のゾーンに入っちゃうのであまり見る人のことは気にしていないです。良いか悪いかを気にしていたら絵を描けなくなっちゃうので、それよりも自分が楽しく描くのが大事だと思います。結局その人が良いと思えば良いし悪いと思えば悪いんで、それも含めて絵を描くという行為をとにかく楽しんでほしいですね。


----今後やっていきたい事や展望があれば教えて下さい。

死ぬ迄に自分がやりたいと思ったプロジェクトは全部やりたいです。それをどうやって形にするかっていうことが生きる目標や目的になっています。『マウント・オブ・アッシュ』っていうZINEを自主製作したんですが、第二弾を出したいですね。あとはいろんな人に出会って、いろんな所に行って、うまいものを食って、良い音楽を聞いて、スキルアップっていうところですね。いつ死んでも悔いが無いようにしたいっていうのがポイントになっていると思います。




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CHROME "YALTA NOA-" ART LTD.
「黒霧」と名付けられたアートワークはCHROMEの象徴色の一つである"黒"、そしてCHROMEが拠点とするサンフランシスコは深い霧で覆われることで有名なことから"霧"という二つの漢字をCHROMEに当て、NOA-によって手掛けられている。

LIVE PAINT at CHROME "YALTA NOA-" ART LTD. LAUNCH PARTY, 2014.5.30, Text/Interview: SO, Photo: Matsu

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