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Musée du Louvre

ルーヴルに掛けられた沢山の眼が見る者を嘲笑い、「又か」とため息を吐く。

季節風が強く吹きはじめたので窓を閉めて暮らしたら、部屋の空気が澱み男はいつしか寝込んでしまった。光を望むこともなく、男は独り、じっとその澱みの中にいた。澱みは男を苦しめた。その都度男は澱みと闘い、在る時、その澱みの正体は自分自身が発したエネルギーである事を知った。男はこの部屋で得た石のように重い心を持って、澱みを従え支配した。闇をのみ込み認めさせたのだ。重く真っ黒な瞳で窓を開けると、外の景色は全て季節風に吹き飛ばされ、そこにはもう男の知る居場所はなかった。誰もが同じような眼鏡をかけ、強風を恐れて次の流行りまで固まって離れようともしない。男は借り物の安心にダイナマイトをぶらさげてニヤリと笑った。

爆風が男を地下鉄でルーヴルへと向かわせた。男はそこに掛けられた沢山の眼を見た。沢山の眼は男を待つ白い壁へと無言で案内した。

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