SHAMAN

酩酊した若い男がカウンターの向こう側にふらふらと座っていた。眠っているようにも見えたが目はしっかりと開かれていた。その男はしきりに隣の席のカップルに何かを話し続けている。しかし背を向けて座る男はその言葉の矛先が自分達である事に気付いてはおらず、女もそれを気にもとめてはいない。

「月と太陽が呼び覚ませし災いの時、我その光にさらされるべき時。翼を奪い、我を封印した異なる教えを学んだ徒よ、我が怒りは全てを許すゆえ宇宙の言葉に耳を傾けなさい。世を見つめ、自分の教えにもう一度問いなさい。我から奪いし二枚の翼が何であるかを調べなさい、そして我々は本来どこから現れ、今どこに向かおうとしているのかを伝えなさい。十方位に散らばりし我が子孫よ、平和の民であるうちに自分たちの在り方をみつけなさい。数に屈してはなりません。そしてあなたの大地を最期まで愛しなさい」

そう言うと男は崩れるように席を立ち、トイレへと向かう途中で嘔吐した。

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