つい先日、ファッションやストリートカルチャーを扱う人気のWEBメディアのhypebeastから連絡をもらい、インタビューを受けました。
最近UPされてたみたいなので、もしよければ見てみて下さい。
こういうマジメな話をする機会もあんまり無いのでちょっとはずかしいですが、一応メディアである以上は注目されているという事は嬉しい事だと思いました。
HIDDEN CHAMPIONは日本語だからほとんど読めないはずなんですが、意外と海外にもファンはいるらしく、LINKIN PARKのMike Shinodaは毎号送ってくれというし、Oakleyの取材でカリフォルニアに行った時は、Oakleyのデザイナーが「実はよくNYのreed spaceに行くから毎号見てるよ」と言ってくれたり、SFのFTCやNYのDQMなんかでもすぐに無くなるとの事です。
次の号も近々発行されるので楽しみにしていてください。
下記、ちょっとカタいですが、hypebeastに掲載されたインタビューの日本語版です。
Print 2.0: Redefining the Craft
Interview: Eugene Kan, Text: So
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数々の雑誌が廃刊などで苦しみ、印刷業界全体が縮小している時代になぜ雑誌を作ろうと思ったのですか?
雑誌を発行するのが難しい事だとは分かっていました。しかし、私が雑誌をしかもフリーで発行しようと思ったのはある意味でその困難な状況だからこそとも言えます。なぜなら多くの雑誌は減少する売上げを補う為にジャーナリズムやオリジナリティではなく、売上げに繋げる為に多くの人に響く大衆的な記事ばかりを取り上げ、雑誌のタイトルこそ違えど内容は全く一緒という物がほとんどです。しかも既にインターネットで知られている情報をわざわざ一ヶ月も遅く印刷しているのです。世界中で多くの興味深い出来事が起こっているのに、売上げに繋がらないマイナーな事はあまり掲載しないのです。結果としてメジャーなものはよりメジャーに、マイナーなものはよりマイナーにとなり、自ら情報を入手出来る感度の良い人達以外は新しい事を知るきっかけが少なくなってきていると感じました。私はミュージシャンやアーティスト、スケートボーダーやBMXライダーなど多くのカルチャーに影響されてきました。しかしそれらの情報は日本のメディアではあまり取り上げられていませんでした。だから自分で発行する事に決めたのです。小さな影響しか無いかもしれませんが、誰かに新しい事を知るきっかけを与える事が出来ると信じていました。フリーで発行する理由は、若者が本屋に行く事が少なくなって来ている今、本屋のカルチャー雑誌コーナーにストックする為の雑誌を作りたくなかったのです。それよりも、好きなブランドのショップや、好きな音楽のかかるCLUB、雰囲気の良いカフェ等で手にして少しでも興味を持ってもらいたいと考えたからです。
雑誌を作り始めることは簡単でしたか?
もちろん大変なことは多かったし、もしかしたら自分が間違った事をしているかも知れないという疑問もありました。しかし、それぞれのカルチャーの素晴らしい人物を取り上げ、それらをミックスしクロスオーバーさせるというコンセプトを話すと多くの人に興味を持ってもらいました。なぜなら私が思っていたのと同じ様に、多くのブランドのマーケティング担当の人達は画一化する雑誌を面白くないと思っていたからです。ある意味では逆境の中で雑誌を始める私を楽しんでいたのかもしれません。
ストリートという、ある意味ニッチなコンテントを扱っているあなたのマガジンですが、インターネットがマガジン自体の認知度やマーケティングに貢献していると思いますか? その例といえば?
もちろん良い影響はあると感じます。インターネットは必要不可欠な物です。私自身毎日インターネットを使いますし、インターネットやメールを通じて読者からの連絡もあります。HIDDEN CHAMPIONは90%は日本で配布していますが、インターネットを通じて世界中の人に知ってもらう事が出来ます。インターネットでアナウンスすると世界中から読みたいという連絡が届きます。そして世界中のアーティストからダイレクトにコンタクトをもらう事もあります。共通の興味を持つ人達とコミュニケーション出来る大切なツールです。
Ipadや他のデジタルタブレットの台頭が雑誌にとって救世主になると騒がれましたが、実際の所それほど盛り上がりを見せていません。それを含め、雑誌業界はどうなると思いますか?
デジタルタブレットが雑誌の代わりになるとは思いません。新聞、雑誌、TV、ラジオ、、等といった多くのメディアに新たな様式が追加されただけだと思います。音楽を聞いたり文章を読んだりする事は知的で能動的な事の様に感じますが、実はすごく動物的で受動的な事だと感じます。なので様々なギミックが無くなり、操作性が統一される頃に浸透するのではないでしょうか。
印刷の面で環境に配慮したことは何か行っていますか? 環境に優しい紙を選んだりとか。
紙を使うメディアの一番の問題は紙の無駄や売れ残った本の消却です。人気の無い雑誌は無駄な情報を印刷して捨てる、その繰り返しです。しかし私の雑誌は返本率は0%です。毎回足りないくらいです。印刷したすべてが誰かの手に渡っています。そういう意味では環境に良いと思います。
デジタルメディアにはない雑誌の魅力とは?
そこにある、という事です。食べ物やアート作品やインテリアと同意義です。手に触ることが出来て、印刷や紙の匂いを嗅げて、紙をめくる音を聞ける、という事です。人はそういういろんな要素が合わさって情報やイメージが脳に届くのではないかと思います。だからHIDDEN CHAMPIONでは、もっと様々な手法を試みたいと考えています。シルクスクリーンプリント、ハンドペイント、そして紙の種類など色々な事に挑戦していきたいと考えています。そして始まりと終わりのある一つのパッケージになる事でデジタルメディアと違い二度と修正する事の出来ない完成したプロダクトになっているのです。HIDDEN CHAMPIONではその時の為だけのニュースなどの記事は掲載しません。それらは印刷するよりもインターネットの方が合っていると感じているからです。印刷するという事はとても贅沢な事だと認識しています。だからそれに値する写真や記事をなるべく綺麗なレイアウトや文字で印刷するという事を心がけています。まだまだ未熟ですが、もっと良くしたいと考えています。
逆にデジタルメディアが雑誌に勝っている点とは?
情報のスピード。そして検索機能やリンクによるストレスフリー。あとは動画などによるエンターテインメント。そしてそれらを携帯出来るという便利さ。という様に多くの事で勝っています。"雑誌とデジタルメディア"というよりも、雑誌、TV、映画、音楽、などの全てにアクセス出来るツールという感覚ではないでしょうか。
デジタルメディアに比べて雑誌に対する敬意を感じますか?
私は99%の雑誌を買わないし無くても困りません。ほとんどの雑誌は毎月の発売日の為にページを埋めているだけのように感じています。しかしオリジナリティやクリエイティビティある数少ない雑誌には敬意を持っていますし、Hypebeastのようにオリジナリティあるデジタルメディアには同様の敬意を感じます。
オンラインを使ったプロモショーンの方が圧倒的な数の人々の目に触れられるのに、なぜブランド(マーケティング担当者)は雑誌にリスペクトを持ち続けるのでしょうか?
昔からの慣習もあると思いますが、それとは別に雑誌もある意味でブランドであるからだと思います。ファッションブランドにファンがいるように良いマガジンブランドにもファンがいます。特定の雑誌の載る事はそれを必要とするブランドにとってはステイタスであるのです。既に今はデジタルメディアの数の方が多いと思いますが、ちゃんとオリジナリティを持ちブランディングされたメディアの数がまだ少ないだけではないでしょうか。何に関してもですが名前がある以上それはブランドであり、信頼とクオリティを高めていかなければならないのだと思います。