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Lil' Dap (Group Home) x MURO, Interview

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変わることのないヒップホップの神髄を唱える

'90年代、GANG STARRのGURUやDJ PREMIERとともにNYブルックリンにてアーティストとして活動を開始、今やクラッシックとなっている名曲「SUPA STAR」を生み出した、'90年代ヒップホップを代表するGROUP HOMEが、去る7月18日代官山UNITで行われたイベント「bathroom」に来日出演を果たした。そのレジェンドLil' Dap (Group Home)と、同じく'90年代を知り日本のヒップホップを代表するDJ MUROとの対談が実現。MURO曰く、「同じ獣道を通ってきた」と言う2人が目指す方向は、東京、ブルックリンと住む街は違えど同じであった。



■ 日本へ来たのは何度目ですか?

Lil' Dap(以下、L):一番最初に日本へ来たのは、2000年のことだ。また再びライヴをしに日本へ来れるチャンスを与えてくれたことに凄く感謝している。


■ 今晩のイベントではどんなライヴをしようと思っていますか?


L:みんなが見たいと思っているだろうGROUP HOMEのものを中心に、'90年代のものから現在のものまでやりたいと思っている。


■ 8月5日にソロ・アルバム『I-A DAP』をリリースしますが、どんな内容のものに仕上がりましたか?

L:今回は、アメリカと日本という2つのメジャーマーケットでリリースしたいと思っているんだ。それからフランス、ドイツも考えているんだが、まずは日本ではGROUP HOMEを再認識してもらい、そしてアメリカでは『I-A DAP』をリリースして、それから日本はLil' Dapのアルバムを、アメリカはGROUP HOMEを知ってもらいたいと思っているんだ。ソロ・アルバム『I-A DAP』ではGROUP HOMEを含め、これまで自分が歩んできた道を一枚にまとめた。そしてもう一度GROUP HOMEやGANG STARRがどれくらい素晴らしいグループだったのかを再認識してもらいたいと思っている。そして、俺たちは未だに音楽をやっていること、それが自分たちの人生だということを知ってもらいたいと思っている。

DJ MURO(以下、M):音楽アーティストであったら誰に一番影響を受けてきたの?

L:JAY-Zは大好きだ。何故かと言うと、JAY-Zは広い目で全体を見ながら成功を手にしてきた人だからだ。それとThe Notorious B.I.G.ことBiggie Smallsも好きだ。ハスラーでありラッパーであり、彼は今日に至っても人々から愛されている。そしてNAS、彼は本当の意味でのブラザーだ。オールドスクール、ニュースクール、ミドルスクールを辿ってきたアーティストたちには影響を受けてきているよ。自分たちが胸に秘めていたことを表現してきた人たちだからね。


■ GROUP HOMEはMUROさんにとって、'90年代当時どのような存在でしたか?


M:「SUPA STAR」がリリースされた時は、もう凄いことになっていましたからね。あの頃は2枚レコードを買うのが普通だったら、2枚レコードを購入したのを覚えている。DJ PREMIERが既に人気があったから「SUPA STAR」もすぐにクラッシック化して、みんなインストで2枚使いをしていましたね。それと「SUPA STAR」のインストをオケにして、マイクロフォン・ペイジャーも良くライヴをやっていたんだよ。

L:そうなのか!

M:イントロも付いているしね。

L:それは光栄なことだ! 「SUPA STAR」では、人々が持ち合わせた人生のPAIN=苦しみを語った曲だった。だからこそGROUP HOMEという名前をグループ名に付けたりもしたんだ。それは今も同じで、ソロアルバム『I-A DAP』も、GROUP HOMEと変わらず同じことを言い続けている。
 

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■日本では、新しい世代の人たちが'90年代のヒップホップに興味を凄く持っているんですよ。

L:だからこそ俺は今、'90年代から現在までのヒップホップを紹介したいと思っているんだ。新世代の若者たちは、'90年代の素晴らしい音を知らないと思うからね。古いものから新しいものまで、歴史とともにヒップホップとはどんなものかを教えたいと思っているんだ。自分たちがどこから来て、どんなバックグラウンドを持っていて、そしてどんなことを表現しているのか。

M:素晴らしいですね。ところで'90年代にGROUP HOMEの活動はどのような感じでスタートしたの?

L:TOMMY HILLと俺はいつも一緒にクラブへ行っては踊ったりしていたんだが、自然にGURUと知り合ってどんどんタイトな付き合いになっていったんだ。そして、GANG STARRのDJ PREMIERも加わり、GROUP HOMEを結成することにしたんだ。俺たちはネイバーフッドに住む仲間だった。GURUはボストンから、DJ PREMIERはテキサスからブルックリンへ来たんだが、俺たちはブルックリンで生まれて育ったブルックリン野郎だったから、GANG STARRの2人にブルックリンという街のスタンプを押したんだよ。バン! とね。俺はまだブルックリンに住んでいるよ。

M:マンハッタンの情報はいろいろ入ってきても、ブルックリンの情報はなかなか日本には入ってこない。ブルックリンが今、どんな感じなのか教えてください。

L:どんどん変化していくニューヨークだが、ブルックリンには変わらない部分がまだある。新世代の若者たちも変わらずヒップホップが好きだ。それは俺たちがヒップホップを好きだった時とほとんど変わらない。ただ若者たちは、本当に良いヒップホップがどんなものなのかを知らないと思うから、俺たちは良い音楽と、良いバイヴスを彼らに教えたいと思っているんだ。

M:それは日本も一緒だね。
 

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L:'90年代から一回りした今がちょうど良い時期で、今こそ'90年代のヒップホップを知ってもらう時なんだ。世界は常に回っているんだよ、360度ね。

M:今はブルックリンのどの辺りに住んでいるの?

L:ブラウンハイツだ。俺は街を自分の足で歩くし、地下鉄にも乗る……ブルックリンという街が俺をケアしてくれ、そしてストリートが俺を育ててくれた。だからこそ、何か人々に返したいと思うんだ。ストリートは俺にとって「GROUP HOME(=集団の家)」のようなものなんだよ。俺は身体にひとつだけタトゥーを入れている。それがGROUP HOMEのマークなんだが、これ以外入れようと思わない。GROUP HOMEは、世界に通じる言葉でもあると思っているからなんだ。ヒップホップをやっている最近の若者たちは、すぐに争いをしたがる傾向にある。それは良くない。だからGROUP HOMEの意味を知らせたいんだ。

M:日本の人たちはどうしても向こうのシーンを見てしまいがちだから、どうしても影響をされてしまうんだよね。

L:だからこそ、PEACE=平和をみんなに教えたいと思うんだ。そして音楽の本質を知れと。

M:そうだと思う!

L:音楽はソウルだ。そして音楽は人々の心の傷を拭い去るものでもあり、音楽は人々を救うものなんだ。音楽とはそういうものだろう。

M:本当に良い話だよ。そういえば前に僕がブルックリン・ミュージアムでDJをした時に、最後までGROUP HOMEの人たちがフロアに残っていてくれたんだよね。

L:おお! あれは君だったのか!!! そうか!!! 良く覚えているよ! チキショー! あのDJは本当に素晴らしかったぜ! そうだったのか!
 

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M:ブルックリンでDJをやるのは本当に夢だったから、DJをすることが凄く嬉しくて、それと自分のDJで朝まで人が残ってくれたことが凄く嬉しかった。夢が叶ったというか。

L:いやあ、そうだよ。俺たち最後までいただろう。全く世界は狭いな。

M:'90年代の頃、1ヶ月に1度の割合でニューヨークへ行っていた時期があったんだけど、あの頃みたいに、もう少し東京とニューヨークの距離を縮めたいんだよね。今、ニューヨークへ行ったらどんなクラブが面白いのかな? なんか7〜8割はサウスばかりでつまらないイメージがある。

L:その通りなんだ。サウスのアーティストでも数名の人たちは、人々の心に響く内容のものを作っているけれど、でもほとんどのアーティストがね……「#'!)("($&%'!0!'")00!!!!!」(※ノリノリでサウスのアーティストのマネをする)ってさ。何を言っているんだかわけがわからん! 何が「!#(&$'!00('&'$#"&!(")!!!!!」だ! まさにファーストフード並みのラップ、マイクロウェーヴ・ラップだよ。電子レンジでチーンみたいなラップなんだ。

一同 爆笑

L:GROUP HOMEはそうではない。10年以上もじっくり時間をかけて熟しているグループなんだ。人々の心の傷を癒す、人々が耳にした時に、拠り所になれるような音楽をこの先20年、30年とやっていきたい。

M:もう使い回しの音楽がほとんどだからね。だからなかなか残っていける音楽が少なくなっていると思うんだよね。

L:そう思うよ。そんな中でGROUP HOMEは結成当時からひとつのラインを決めてやってきている。そのラインから外れないように音楽を作ってきた。自分を見失うことの方が多いヒップホップシーンの中で、フォーカスを定めてやっていくこと。そのことに意味があると俺は思っているんだ。
 

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■ MUROさんへの質問はありますか?

L:せっかく再会できたのだから、何か一緒にプロジェクトをやりたいね。あのDJは本当に素晴らしかったから、リスペクトの意を込めてローバジェットで仕事は受けさせてもらうよ。トラックをくれたら、すぐにリリックを書く。MUROだけのものをね。

M:本当! 嬉しいな。やっぱり通ってきたところが一緒だから、スピリットが一緒なんだよね。では、日本のヒップホップのファンへメッセージを下さい。特に'90年代を通過してきたファンへ向けて。

L:'90年代から2000年代にかけてヒップホップは世界的にどんどん大きくなっている。その中で俺たちは、誰に何を言われようと1つのことに向かってやり続けている。だから、みんなも頭をしっかり空に向けて、やり通して欲しい。そうすれば、夢は叶うはずだ。
 


■ ではMUROさんからヒップホップファンへメッセージを。

M:ちゃんとみんな良いものまで辿り着いて欲しいですね。音楽にしても、服でもそうですけど。ある一線のところで満足しないで、もっと良いものがあると思うから。そこで満足しないで、辿り着いて欲しいですね。


■ 今日は多くは語らずとも、お二人の中で共感できる確かなものが見えた感じがします。

M:やっぱり同じ獣道を通ってきましたからね、'90年代の。あの頃は無限な可能性がまだまだあった時だったから、みんな必死にやっていた。それをBiggie SmallsやJAY-Zが実際に形にしてくれたと思うんだけど、ずっとやり続けている人というのは本当に凄いと思うんだよね。まさに365日キープ・オン・ディギン、何かを突き詰めたりとか追いつめたりとか、そういう探究心みたいな姿勢は忘れないでいきたいですね。

L:「365日キープ・オン・ディギン」……なんて美しい言葉なんだ!

 

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<プロフィール>

Lil' Dap (GROUP HOME)(リル・ダップ、グループ・ホーム)
www.myspace.com/lildapgrouphome

ギャング・スター (Gang Starr)のDJプレミア (DJ Premier)にその才能を惚れ込まれ、Gang Starr Foundationの一員としてそのキャリアをスタートさせた、リル・ダップ (Lil' Dap)を核とするグループ・ホーム (Group Home)。'94年に御大Premier渾身のプロデュースによるシングル"Supa Star"で衝撃デビュー!!メロウなイントロからCameo "Hangin' Downtown"とB-Boy大定番J.B. "Funky President"を複雑に組み替えグルーヴィに仕上げられたこのトラックは、ここ日本でもヘッズの度胆をブチ抜き、当時のHip Hopアナログ史上最も”2枚使い”された1曲となる。翌95年にはPremier全面プロデュースによる1stアルバム「Livin' Proof」を発表!!拘り抜いた極太ドラムに流麗な上モノの素晴らしきアンサンブル...メロディではなく単音のミニマム・ループが「音」の魅力を最大限に増幅させ、黒く、同時に透明で鋭利なスタイリッシュさを兼ね備え、Premier自ら”最高傑作”...と語ったこの作品は、サンプリング/ループ/トラック/ラップ、その全てにおいてミドル・スクールの「完成形」であり、後のアブストラクト、エレクトロニカにも通じる「歴史的名盤」として今日のダンスフロアでも流され続けている。'99年に2ndアルバム「A Tear For The Ghetto」をリリース。その後、Lil' Dapはソロ名義のシングルを発表するほか、同じくGang Starr Foundation出身ののJeru The Damaja等への客演などアングラな活動を続ける。そして'08年「Group Home」名義として約9年ぶりとなる新作「Where Back」を遂にリリース!!1stのPremierとのタッグを彷彿させるそのドープかつスタイリッシュな内容は、Group Homeが真の「HIP HOP」アーティストであることを鮮明に思い起こさせてくれる。


MURO(ムロ)
www.murotimate.com
www.myspace.com/murotimate

日本が世界に誇るKing Of Diggin'ことMURO。80年代後半からKrush Possee、Microphone Pagerでの活動を経て99年にソロとしてメジャーデビュー。以来、MCとしてはもとより、「世界一のDigger」としてプロデュース/DJでの活動の幅をアンダーグラウンドからメジャーまで、そしてワールドワイドに広げていく。昨年にはミラノで行われたNIKE AIRFORCE 1のイベントでのDJ出演を皮切りにロンドン/アムステルダムでのヨーロッパ・ツアーも敢行。また、同年12月には北京で行われたFENDIのファッションショーのアフター・パーティでDJを、そして2008年4月にはNYのBrooklyn Museumで行われた村上隆氏のエキシビションのオープニング・イベントにてDJを行う。また、今年1月よりOAの安室奈美恵によるヴィダルサスーンCMタイアップ曲「Rock Steady」をプロデュース。多岐に渡るフィールドでその動向が最も注目されているアーティストである。





Photo > Yasunori Hasegawa
Text > Kana Yoshioka
Thanks > HITOMI Productions
HIDDEN CHAMPION ISSUE#11 August, 2008

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