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RICH ADLER - philadelphia experiment -, Interview

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フィラデルフィアから一本の電話が届く。
若手のスケーターを空港に迎えに出向いて欲しいと。
翌日、成田で出会った青年は、右手にビール、左手に
スケートボードをもちながら「ヘェイ」とはにかんだ。

後に、スケートボードへの熱い想い、ビデオ編集に懸ける意気込み、
実直で真摯に全ての事柄に向き合う彼の姿に、多くの出会った日本人が
感銘を受けることになるとは、この時はしるはずもなかった。

 


■ 簡単な自己紹介をお願いします

生まれはフィラデルフィアの郊外で、11歳のときにスケートボードに出会った。14歳の頃には、ほぼ毎日放課後になると電車でフィリー(フィラデルフィアの略語)まで通うようになり、とにかくスケートボードに明け暮れる毎日を過ごした。学校や近所にはあまり友達がいなかったけど、多くのスケーター友達と仲良くしていたな。高校卒業後はフィリー郊外の小さな大学に通うようになるも、勉学の傍らLOVE PARK(フィラデルフィアにある有名な公園、通称ラヴ・パーク)でスケートは続けていたよ。その頃一緒に滑っていたスケーターはいまでも良い友達。


■ 日本人の印象を訊かせてください 

日本で出会った全てのスケーターをはじめその他の人も、いままでの人生で出会った中でも一際素敵な人ばかり。ストリートスケートボーディングを愛し、そして理解している人ばかりか、他人を優先させることのできる配慮のできた人が多い。


■ フィラデルフィアと東京との、スケート環境の違いは?

自分にとってはフィリーはさまざまなことが限定される小さい街。犯罪率の高い物騒な街で、たまに自分たちがいつも滑っているスケートスポットの側で殺人事件が起きた、なんてことをニュースでみることがある。北フィラデルフィアなんて戦場といっても過言じゃない。誰も仕事していないし、多くの人がドラッグを売ることによってなんとか生活をしているようなところだからね。
自分が思うに、犯罪者による理解不能な悪の競争原理が働いている気がする。日が暮れてからはスケートできないエリアが多いから、明るいうちに滑らなくてならない場所も多くあるよ。東京はと言うと、巨大なイメージがある。何もかも終わることがないというか、永遠に続くように思える。それでいて治安はいいので、夜中であろうとどこのエリアのどの方向へも、自由にスケートボードで滑っていける気がする。エンドレスに見つけられるスケートスポットの数々と、スケートボードの可能性をはらんだ街が東京。
 

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赤坂の路地裏で発見したスポットをすかさず攻め立てる。
即興でトリックを決める、RICH流ストリートの醍醐味。


■ どのようなスタイルのスケートが好きなのですか?

ナチュラルなスケートスタイルがベストだね。ビデオに関して言えば、観たあとにスケートしたくなる衝動に駆られるものが理想。あり得ないサイズの階段を飛んでいくような、スーパーヒーローみたいなのはちょっとね(笑)。映像を見て、直ぐ真似できるというか、自分でもトライしたいと思えるようなスケートの映像を見たいと思っている。自分的には街中を自由気ままにクルージングしながら、オーリーで段差を登ったり降りたり、適当にマニュアル(ウィリーのこと)をしたりするのが好きだな。このスタイルこそ、スケートボードの純粋な姿なのだと思っている。

 

■ スケートボードの魅力とは?  

世界中で出会う友達。目にする信じられない光景の数々。普通の人が訪れることのない街の断片にいられること。スケートボードをすることによって、いつでもどこにでもいられる理由があること。そして、これが僕がスケートする上でのかけがえのない魅力。


■ 所属するブランド「Traffic」について教えてください  

スケートボードが本当はどうあるべきかを、社長でありプロスケーターであるリッキー・オヨラのヴィジョンを反映させたブランド。西海岸に一極化されるスケート産業のジレンマから開放され、我々のやり方で実践できる夢の断片であり、「Traffic」を通して我々はそれを成し遂げようとしてる。


■ 何から感銘を受けますか?

仲間、そしてスケートボーディングが生み出す未知数のポテンシャル。リミットもルールも皆無なスケートボードの世界で、自分次第でどうにでも出来るという事実からだね。
 

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様々な人々が、それぞれの理由で行き交う夜の池袋。6,800mile
離れたフィラデルフィアからこの場所を訪れた、RICH的理由。


■ 今までに訪れた好きな都市と、その理由を教えてください 

東京。ここで出会ったスケーターはみんな本物の友達であり、リアルなスケートボーダー。彼らは真面目で何事にも真剣に向き合い、なによりもスケートボードへの理解と感謝の念を一時も忘れない仲間がいる場所だから。


■ スケーターとそうでない人との違いはなんだと思いますか? 

色々なタイプの人がいるので一概には言えないけど、スケーターのほうが若くいられるってこと。肉体的にも精神的にも。そしてスケーターは「普通」や「平凡」とは、ほど遠いライフスタイルを送っているということ。
 

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■ 現在進行しているプロジェクトについて教えてください  

リッキー・オヨラとTrafficの日本ツアーのDVD制作に取り組んでいる。リッキーが昔から構想を練っていた世界の都市のストリートをスケートでまわり作品に落とし込む企画。ストリート・スケーターとしての強さにフォーカスし、作品を介して世界へ日本のスケーターとスケートボードのあり方を伝えたい。そして、日本のスケーターやカルチャーの個性から我々が何を学んだか、といった側面をリアルに伝えることがスケート以上にこの作品では大切なエッセンスだと思っている。加えて、Trafficのライダーである大本“DESHI”芳大のフルパートも収録されているので、内容の濃い作品になることは疑う余地はないね。この作品を通して、若いスケーターたちがストリート・スケーティングの魅力を再確認して、スケートボード愛が増すきっかけになれば嬉しいと思う。


■ 今後の予定は?

LOVE PARKのドキュメンタリー作品を作りたいんだ。スケートビデオや雑誌に出てくるような有名な連中の話ではなく、リアルにあそこで滑っていたローカル・キッズたちの話をまとめて伝えられればと。彼らの肉声を聞けば、スケーターではない人にも、彼らの本物のLOVE PARKとスケートへの愛情を伝えることが出来るはずなんだ。

 

www.trafficskateboards.com

 

 

Photo > ISEKI
Text > KUNJIRO
HIDDEN CHAMPION ISSUE#11 August, 2008

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