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Posted by yoshi47

Consecutive Interpretation / 逐次通訳とは



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5月30日〜6月3日まで、Chris Kingという自転車界の伝説的人物の『逐次通訳』として、東京、広島、大阪、名古屋にてツアーをしてきました。

実際の話、俺は『翻訳』という仕事を8年以上してきており、既存する文章を和訳、そして英訳する事にはとても慣れており、芸術家という傍ら翻訳家として活動をしています。しかし、今回は『逐次通訳』としての仕事をいただき、初めての事なのでどのように物事が進むのか、どのように頭の中が回転して、失敗とは、成功とはどういうものなのか、全く分からないまま4つの都市にて舞台通訳をしてきました。

ちなみに逐次通訳とは、話手が話す間、ある程度話しを区切りつつ、その言われた言葉を聞き手の言葉にして代理で話す業務の事を言います。



①東京

東京が俺の初舞台となります。東京にはChris Kingのファンが大勢おり、とても緊迫した会場の雰囲気でした。心の中では緊張しつつも、通常の通訳(アテンド通訳)には慣れていたので、そのまま話している事を訳せば大丈夫だと言い聞かせ、本番に望みました。結果は、40点。基本的に伝えなければ行けない事、お客さんが知りたいと思っている事はできましたが、多くの反省点が見つかりました。ここまで難しいんだとボコボコにされた気分でした。終わった時は安堵を感じるとともに、悔しさが物凄かったです。自分はここまでできないんだと。久しぶりにぶちのめされた感じでした。しかし、お客さんの中には普通に分かりやすかったよと言ってくれたり、お疲れさまですと声をかけていただけたりしたのですが、やっぱり完璧主義で問題が出たら解決したくなる性格上、全く納得してなかったですね。

②広島

東京から広島までの間に、とりあえず、まだ会ったばかりでお互いの事をみんな知らないという事が感じられていたので、英語がペラペラな俺が率先して色々質問をし、会話を盛り上げ、ビールを飲みまくり、最終的には野郎達トークに持ち込むという事に成功しました。英語による笑いのツボを良く知っているので、笑いが好きなJayにはそういった話を持ち込み、ちょっと他のお客には『よく話す外人だな』って思われていたかもしれませんが。Jayとは違って、Dillanはサーファーであり、2年前に結婚をしたばかりであり、優しい心を持っている人間と分かったので、海の話や、歳が近かったために将来の事を話したり、彼の妻の素晴らしい事とか、将来子供が欲しいのかとか話したりしました。一方Chris Kingさんはもうレジェンドなので、どんな話を好むのか東京で色々質問してましたが、中々口を割らず、もの静かな人だなと思っていましたが、新幹線で大爆発。例えば、俺は料理が好きなので、その料理についての話をしたところ、目の色が変わって話し続けたり、自分が貧乏だった頃から今に至るまでの話が共通しており、俺の気持ちをくみ取ってくれたり、最後には惑星の話をして、完全に宇宙学にまで発展して、結局広島についた頃にはもう既に10年くらい一緒にいる友人のようにみんなが打ち解けて一緒に渋いバーでウィスキーを飲みながら人生を語りました。そのおかげで、翌日行なわれた舞台では、お互いの息が統合し、スムーズに、そして俺の心にも余裕が出来、通訳者として50点くらいはもらえる出来だったのではないかなと思いました。だけれども、やはり50点。反省点はまだまだ残ります。

広島で面白かった事は、300万くらいするエスプレッソマシーンの使い方、そしてコーヒーをどうしたらどのようになるか、というレクチャーを俺が受ける事になります。というのも、そのお店でコーヒーを作っている人に対する通訳として。結局1時間くらい俺はコーヒーについて勉強しますが、物凄く難しい、でもDillanが言うには、通常は半年かけて習う事を今俺は1時間で習ったんだよと伝えてくれて、最後に日本語で伝えるには俺自身が分かっていなければならないので、それが全て理解できた時、コーヒーの知識が100倍くらい増えました。ノートにとらなくても理解してしまったので忘れる事はありません。完全にお店を持つ事ができる知識だったのですが、あとは経験があれば俺はプロのバリスタになれるぞって言われました。うんなりません。

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③大阪

大阪では色々事件が起こりました。今回Chris Kingを日本に呼んだのは名古屋のCirclesという自転車の会社なのですが、その社長が、東京と同様横に立っていました。通訳者は、話者が話しすぎるのをある程度区切る必要があるのですが、時々区切ってしまうとその時の『情熱』が消えてしまう事があります。これはとても難しいのですが、結局情熱を切ってしまうか、分かりやすく自分のために切ってしまうかを考えた結果、情熱を選びました。その結果、長い間話してしまう事が起こり、それを感じた社長は水をさし込んだ形で俺に対し声をかけました。その時、完全に頭の中が真っ白になりました。聞いている対象が1つに限定されており、とても集中していたために、他からの思いがけない差し込みが一気に記憶を消しさってしまったのです。そこで慌てても仕方がないので、まずは社長がなぜ声をかけたのかを理解した上で、もう一度要約して話してくれないかとChris Kingに頼みました。落ち着いて対処をしたのだけれど、やっぱりこれは失敗であり、聞く人にとってはその『情熱』が一気に冷める瞬間でもあったと思います。

④名古屋

他の3都市と比較して、名古屋では来場者がとても多かったです。そして、他では2時間以内などで終わっていましたが、名古屋だけ4時間30分の間(休憩を少し入れつつ)、通訳をし続けました。ありえない長さだったのを今でも覚えています。しかも、他の3都市とは全く違う話しが出てきたり、化学、水力発電、などなど、完全なる理系の話が多くなり、かなり追い込まれた時間が多々ありました。しかし、最後という事と、3都市で学んだ事を活かしたいという気持ち(負けず嫌い)、完璧主義である自分のプライドが失敗を許さない集中力を生み出してくれ、どんなに難しい話しでも、最後までやりきる事ができました。80点かな。


逐次通訳に必要な事

★ノートを取る事

★事前に話す事をミーティングする事(今回は時間がなかったのですが、時間がある時は必須)

★できるだけ、政治経済、産業、工業、などの他が専門としているところを知識として知っておく必要がある。そういう知識が、突然難しい話が出てきても対処できる武器となる。新聞などを購読する必要性。

★声を大きくというよりか、口を大きくあけてしっかりと話すこと。あたりまえですが。

★日本語をもっともっと洗練させて、綺麗に、そして分かりやすく(ニュースキャスターなみに)話す技術を持つ事。滑舌の問題もやはり聞いている人にとっては大切な問題になってくるので。

★区切る勇気

★話手をコントロールする力

★体力

★記憶力




以上の事がしっかりできていれば通訳として、少しは仕事になるのではと思わされました。上記の事項はあたりまえの事なのですが、時と場合によって制限される事があります。例えば、会場の雰囲気を大事にするためにノートを取る行為が望まれない場合、話手が自己中心すぎて、区切ろうとしても区切らせてくれない場合。ミーティングなどする時間がない場合。などなど、色々な状況があると思います。

初めて『逐次通訳』というものをやらせてもらって、久々に大きな壁を見て、それを飛び越えたいと思わされたお仕事でした。次はいつ、どういうものがきても自信をもってできる技術を得る事ができたことにとても感謝しています。久しぶりに新しい世界をのぞかせてもらいました。ありがとう。でもやっぱり普通の通訳(アテンド通訳)ではなくて逐次通訳ってめちゃくちゃ体力使うな〜ってのが正直な感想です。同時通訳なんて頭の中どんな感じで動いてんだろって思う時があります。いや〜通訳ってすごい!

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