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C.L.Smooth x DJ KRUSH Interview

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去る7月13日、C.L.スムースが約12年振りに来日を果たした。名曲「Straight It Out」でライヴが始まった瞬間、会場はもの凄い熱気に包まれ、そして日本サイドではDJクラッシュが待ち受け、アツいDJプレイを見せてくれた。二人は、'95年にリリースされたDJクラッシュの3rdアルバム『迷走-MEISO-』で共演したことがあり、「Only The Strong Survive」は、革新的な一曲として現在も存在している。今回はそれ以来の対面……国境を越え、ヒップホップを愛する者同士の声をお届けしよう。


「彼らが凄く好きで、クラブでDJをする時はしょっちゅうプレイしていてファンだったんですよ」(DJクラッシュ)


「一つのことに関して、しっかりとフォーカスの定まった人だと思った」(C.L.スムース)



■ 先日、代官山UNITで行われたライヴはどうでしたか?

C.L. SMOOTH(以下、C):一つの大きなパーティであって、まるで一つの家族のようであって……言葉に置き換えられないくらい、素晴らしい時間を過ごすことができた。みんなに本当に感謝している。

DJ KRUSH(以下、K):この間はお客さんも凄く楽しんでくれていたし、本当に良いショウだったと思うよ。

C:クラッシュとも一緒にいることができたしとても嬉しく感じたし、そしてとても光栄なことだった。


■ C.L.は今回で何度目の来日ですか?

C:一番最初に日本へ来たのは'92年で、その次は'95年の「バレンタイン・デイ・ツアー」で来た。


■ ということは、今回はまさに12年振りの来日となる訳ですね!

C:そうだよ。12年間の間で世界は全て変わっているからね。


■ お二人が出会ったきっかけとなる作品が、'95年にソニーよりリリースされたクラッシュの3rdアルバム『迷走-MEISO-』の中の、「Only The Strong Survive」で共演したことがきっかけなのではと思いますが、クラッシュが当時ラッパーにC.L.を選んだ理由は何だったのですか?

K:ピート・ロック&C.L.スムースでC.L.がやっていた頃、彼らが凄く好きで、クラブでDJをする時はしょっちゅうプレイしていてファンだったんですよ。何か一緒にできないかとずっと思っていたんだけど、それがあの曲で実現できてね。とても嬉しかったね。


■ C.L.から見たクラッシュの一番最初の印象は?

C:一つのことに関して、しっかりとフォーカスの定まった人だと思った。そして非常に謙虚な人で、洗練された人だとも思った。もうずっとクラッシュには、感謝の気持ちで一杯だよ。彼は日本のヒップホップのパイオニア的存在であると共に、俺の存在を日本へ紹介してくれた。そして一緒に制作をしたことによって、俺自身の世界観が広がったんだ。


■ '95年と言えば、当時クラッシュの音はイギリスではトリップ・ホップと言われていたかと思いますが、その頃ニューヨークにいたC.L.はその音をどう感じていましたか? 

C:それまで全く体験をしなかった音だったし、俺を新しい道へと導いてくれたんだ。それとあの時は、(ピート・ロック以外の)新しいDJと制作をするという重要な機会を与えてくれた……しかも日本人のDJと言うね。これは自分にとって素晴らしい体験だったよ。

K:俺は、最初ヨーロッパで火が着いたということから、Mo'waxからもリリースをした訳だけど、でもやはり一番最初にヤラれたのは、アメリカで生まれたヒップホップだったからね。映画『ワイルド・スタイル』を見て、凄くやりたいなと思ったんだけど、でもその時僕はまだ勉強不足で、自分の音をアメリカへ持って行っても、「コピーしてるだけじゃん」って言われるのがオチだと思ったから、だからまず最初はヨーロッパへ自分の音を持って行って、それで自分なりのヒップホップを見つけながらいずれアメリカへ行こうと思っていたんだよね。そんな中で、自分が探し求めてやったヒップホップが、結果こうなっている。


■ クラッシュは『ワイルド・スタイル』でヒップホップへの道へ入っていった訳ですが、C.L.は何がきっかけでヒップホップの道へ入って行ったのですか?


C:俺はヒップホップが持つ、スピリットがとにかく好きだったんだ。音楽から広がっていく家族だったり、ローカルだったり。朝起きて学校へ行ってジャズの生演奏を聴いて……ホーン、ピアノ、これらの音楽から、音楽にはパワーが宿っているということを学んだんだ。俺は祖母の元で育ったから、小さな頃はオールドソウル=ジャズやクラシックスなんかを聴くことが多かった。それが今の俺のルーツにも繋がってくる。


■ そして実際、'95年に行われたレコーディングはどうでしたか?

K:僕はこの通り、全く英語が話せないから(笑)。でも音をドカンとスピーカーから出せば、何か必ず感じてくれるだろうと思って。それがヒップホップだと思うし。そうしたらその通り、聴いた瞬間にC.L.がバーっとリリックを書き出してくれたんだ。

C:あの時クラッシュの音を聴いた瞬間、自分が何をすべきなのかが分かった。そして一瞬にしてもの凄い成長を遂げた自分がいたんだ。あの曲がリリースされてから、様々なインタビューを受けたけど、みんなそれまでに無かったものが誕生したと思っていたんじゃないかな。「Only The Strong Survive」は、自分のキャリアに名を残す名曲となったと思うし、初めて異なった角度から制作に望んだ曲だった。だからこそ、あの時は凄く謙虚な気持ちで制作に望むことができたんだ。DJクラッシュとC.L.スムースがアメリカ、ヨーロッパ、そして日本に向けてやったことは大きな出来事だったと思う。

K:俺がC.L.とやれたことによって、それを見ていた日本の若い子たちも、「ヒップホップは国境を超えることができるんだ」って勇気をもらったと思うし。

C:それとそれまで俺は、ピート・ロック&C.L.スムースでやってきていたから、あの曲は、初めて独立心を持って仕事に望んだものだった。だから、「いろいろなことが人生で起きようと、どんなことにでも立ち向かうことができる」と言った内容の詞を書いたんだよ。

K:それで、「Only The Strong Survive」というタイトルが付いたんだよね。
 

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「ヒップホップの歴史をきちんと知り、そして敬意を払わなければ」(C.L.スムース)



■ ちなみに今、'90年代の音がまた人気を呼んでいますが、実際に'90年代を代表するアーティストであるお二人にとって、'90年代とはどのような時代だったと思いますか?

C:みんなもっと、オリジナルな音楽を制作していたんじゃないかと思う。今はほとんどがコピーばかりで、誰かの後ろ姿を追っているような気がしてならない。'90年代は、まさにヒップホップの輝かしい時代だったんじゃないかな?

K:そうだよね。なんかこう言うと古い感じになちゃうけど、確かに今のヒップホップはいろいろなタイプに枝分かれしている時期でもあると思うんだけど、でも俺たちは結局、王道を行くヒップホップを聴いて育ってきたからか、なんかそこに戻ってしまうよね(笑)。

C:そう、オリジナルにね(笑)。誰もコピーなんかせず、オリジナルを大切に、自分たちの音楽に誇りを持っていた。


■ 後、もっと自由だったような気がします。


K:うんうん。自由だった。


■ お二人は、'80年代から「ヒップホップ」をやり続けているかと思うのですが、変わらないことと、変わったことは何だと思いますか?

K:どうなんだろうね。ヒップホップがでかくなればなるほど、お金を追っかけてやっている人が多くなっているような気がする。前はもっと、音楽をやっていたら後ろにお金が付いてきたって感じだったんじゃないかな。

C:ヒップホップには、4つのエレメントがあるんだけれど……ブレイクダンス、グラフィティ、MC、そしてDJ。この4つのエレメントの成り立ちが見失われている。音楽で言えば、みんな金を儲けたいがためにベストなレコードを制作しようとしていない。それと新しい世代の人たちは、ヒップホップの歴史というものを知らなければ、知ろうともしない。ヒップホップをやりたいと思うんだったら、本当はヒップホップの歴史を知り、敬意を払わなければいけないことなのに。

K:それは俺も同感だな。日本にもそう言う若い人たちがいるなと思う時があるんだけど、それは少し寂しいなって思いますよ。


■ そういった中で昨年、CLはアルバム『アメリカン・ミー』をリリースしたわけですが、このアルバムはどのような気持ちを込めて制作されたのですか?

C:現在、アメリカという国で起きていることを中心に、自分が身の回りで感じたことや認知したこと、そして分かったことなどを伝えたかったんだ。そして、どんなことにも惑わされることなく揺るぎない自分を持って欲しいと。音楽は、教育するには最高なツールだと思うから、『アメリカン・ミー』で自分という存在を大統領という位置に置き換えてみたんだ。それでリスナーに、CLスムースに関して……彼はどのような形でグループを組んだのか、そしてどうソロになっていったのか、という自分の歴史を打ち出し、それに置き換えることによって教育をしているのさ。そして、クリエイティヴに関して最高峰な位置でディスカッションしているんだよ。それでタイトルを『アメリカン・ミー』と名付けたのさ。


■ 人々に自分の生き方を教えたかったのですね。

C:自分の人生は、こんなにも世界で嫌われているアメリカにある。何も答えが出てこない、そして未来が何もないと言われているような状況を、俺は音楽で変えたいと願っている。だから音楽をやっている人たちには、同じような気持ちで戻ってきて欲しいと思うんだよ。そして今、12〜13歳の子供たちでラップをしているような子供たちがいたら、その子たちに何故ラップをするのかという事の意味を教えたい。
 

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「国境を越えて、音楽でコラボレイトしていくことはとてもいいことだと思うし、これからも国境を超えて頑張っていきたい」(DJクラッシュ)


■ 今後、二人で何かやろうという話は出ていますか?

K:この間ショウが終わった後に久しぶりに話をしたんだけど、10何年振りだっけ? うん。お互い年もとって大人になったので、機会があったらお互いまたぶつかってみてもいいんじゃないかなと思っていますよ。俺は。

C:そうそう。あとね『アメリカン・ミー』をインターナショナルなものに仕上げようと思っていて、今、異なった国のプロデューサーたちにリミックスを依頼しようとしているんだ。是非、クラッシュにも参加してもらいたいと思っている。

K:ばっちりばっちり(笑)。


■ C.L.はクラッシュに質問はありますか?


C:日本のヒップホップのパイオニア的存在として君臨していると思うけれど、それはどんな気分?


■ 素晴らしい質問です!

C:笑

K:俺はね、別にパイオニアになろうと思ってやってきたんじゃなくって、知らない間にそうなっちゃったから(笑)。

C:彼はパイオニアだぞ! 日本のヒップホップ界の神だ!なんてたって俺の扉を開いてくれたし、そして俺が今ここにいるのもクラッシュのお陰なんだ!
 

K:どうもありがとう! ……もうちょっと頑張らなくちゃいけないな(笑)。


■ では、今後の予定などお聞かせください。


C:フリースタイルを収録したミックステープをリリースする予定だ。アトランタにいるザ・アウト・サイダーと一緒に制作しているんだ。ヌジャベスと一緒に仕事をしている人だよ。それとこれからDJクラッシュとも仕事をしたいと思っているし、何かクラッシュに特別なことをしたいし、それにしてもらえると最高に嬉しいね。


■ テープはどのようにしたら手に入るのですか?

C:俺のウェブサイトにいって、ログオンしてC.L.スムースのフリースタイルのテープを購入! クリックすればいいだけさ。


■ クラッシュの今後のご予定はいかがですか?


K:DVDがアメリカで発売されるので、そのツアーを秋口くらいに一ヶ月ほど行う予定だよ。

C:それで10月4日にニューヨークで一緒にショウをやるんだよ!

K:決まってるんだ(笑)

C:そうだよ!10月4日ニューヨークでだ。


■ では、C.L.からクラッシュヘメッセージを。そして日本のファンにもメッセージをください。


C:クラッシュ、俺に新しい扉を開いてくれて本当にありがとう。とても感謝している。このレコード=「Only The Strong Survive」は、俺にとって、「独りでもやっていける」という確固たる気持ちが芽生えた重要な作品だった。この一枚で自分は変わった。そして日本の皆へ。ツアーをサポートしてくれて、音楽を愛してくれて楽しんでくれて、本当に言葉がでないほど感謝している。日本にこのままずっと居座っちゃいたいくらいだよ。自分自身とても楽しんでいるし、日本は大好きだよ。

K:凄く嬉しい言葉をありがとう。俺もC.L.と一緒にやったあの曲は、自分にとっても分岐点だったし、それによって大きな扉が俺も開けたんだ。C.L.にとても感謝している。あと、ヒップホップがあったからこそ、今俺はこうして仕事をできているし、表現できていると思うので、ヒップホップという存在にもの凄く感謝しています。


■ では最後に、クラッシュから日本のみんなへメッセージを。

K:こうやって国境を越えて、音楽でコラボレイトしていくことはとてもいいことだと思うし、これからも国境を超えて頑張っていきたいなって。だからみんなも目を広く大きく持ちましょう!




<プロフィール>
C.L. SMOOTH(C.L.スムース)
'90年代初頭ヒップホップ界を揺るがした、1DJ/1MCからなるピート・ロック&C.L.スムースのMCとして、「Da Two」、「Back On Da Block」、 「Fly Till Die」など数々の名曲をドロップ。ジャズを背景にストイックなリリックを手がけメジャーから、アンダーグラウンドから人気を呼ぶ。ソロ活動スタート後、'96年DJクラッシュとともに「Only The Strong Survive」を制作。そして今年、満を持しての1stアルバム『アメリカン・ミー』を、Shaman Works Recordingsよりリリースした。
www.clsmooth.com

DJ KRUSH(DJクラッシュ)
映画『ワイルド・スタイル』に出会ったことからヒップホップへ目覚め、'80年代初頭よりDJ活動をスタート。KRUSH POSSEを経て、'92年ソロとして精力的に活動を開始。'94年の1stアルバム『KRUSH』リリース以降、世界各地で多数の作品を発表し、これまでのリリースアルバムは8枚を数え、'06年には自身初のセルフリミックスアルバム『STEPPING STONES』をリリース。そして、'07年にはドキュメンタリーDVDボックス『吸毛常磨』、DVD『鼓道』『阿口云』をそれぞれリリース。日本が世界に誇るプロデューサー/DJである。
www.mmjp.or.jp/sus/krush



Text > Kana Yoshioka

Photo > Takashi Akiyama
HIDDEN CHAMPION ISSUE#09 August, 2007

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