DJ/トラックメーカーである瀬戸智樹とDJ Chikaのふたりからなるユニット、Cradle。彼らは今、その活動の幅を広げるべく新たなプロジェクトCradle Orchestraを始動させた。そこには、国内の音楽シーンで活躍する演奏者、ヴァイオリニストのAsuka、ベースのMichitaro、そしてフルートのAyaらに加え、世界的な超一流のラッパーやシンガーをフィーチャリング。Cradleが提示する新たな音、ヒップホップ+α。来年には発表されるその全貌について、主要メンバーである瀬戸、DJ Chika、Asuka、Michitaro、Ayaの5名に話を聞いた。
■ Cradle Orchestraの発端は?
瀬戸智樹(以下瀬戸):もともとライブで生楽器を取り入れていたんですけど、やっているうちに僕らが普段サンプリングで作る曲以上のものができる可能性が見えてきて。生楽器を取り入れたバンド、それよりももっと有機的なかたちにしたくて、それでオーケストラに。
■ オーケストラって、これまでの活動とは全然違いますよね。
DJ Chika: まず曲をゼロから作らなくちゃいけなくなりましたね。
瀬戸: コード進行、メロディを作って、譜面も起こして。レコーディングもすべてやらなくちゃいけないんで、制作に関しては大きく変わりましたね。1人で完結できていたものが、今はみんながいないと成立しない。ただ、その反面これまでできなかった曲ができるんですけど。
■ ライブの際はどんな感じになるのですか?
瀬戸: 本当にオーケストラ編成くらいの感じででやりたいんですけど、まだ構想段階です。個人的にはけっこう楽しみなんですよね。
■ ChikaさんはDJとしてオーケストラに加わる気分はいかがですか。DJは基本1人じゃないですか。
DJ Chika: 僕はDJのときも基本的にプレイヤー感覚でいるので、そんなに違和感ないですよ。仲間が増えた感じがするだけで。言ってみればターンテーブルも楽器のひとつだし。
■ 今回参加したみなさんはこの話を聞いたときどうでした?
Asuka: 今まで私がやってきたことと全然違うし、一緒にやっていけるのかどうか不安でしたね。でも制作をし始めてみて、意外と大丈夫だなって。
Aya: 楽器だけのバンドだったら何となく想像がつくんですけど、DJがいて、ラップがあって。そういう感覚は今までなかったので、私の場合は不安というより……、謎な感じ。
Michitaro: 僕は彼らと知り合ってもう6年ぐらいになるんで不安や謎はなかったですけど、ここでは普段やってることと全く違う次元の面白さを感じられるのは確かですね。それが今回のオーケストラはより高いところできそうな気がするんですよ。今はまだ先が見えないんですけど、だからこその面白さも感じてます。
■ 現在は制作進行中?
瀬戸: そうですね。制作に関してはあえて時間は長めにとっていて、まだまだこれからって感じです。ただ、オーケストラなんですけど実はそれはあくまでプラスα。Cradleが絡んでる以上、基本的には打ち込みなんですよ。今までと変わらずクラブ・ミュージックだという事は意識して作ってますね。ただ、完成形がまだ見えていなくて、最後はどこまでいけるか、それもまた楽しみ。
■ 打ち込みと言っても幅広いですが、具体的にはどんなかたちに?
瀬戸: 今回はすべてヒップホップ・マナーに沿った感じで、BPMの幅はある程度決めてるんです。だから早いもの、あえてハウス的なフォーマットのリズムは外しました。本当はBPMが120ぐらいの曲が入ってると、ミュージシャンの演奏の幅が広がると思うんですけど、今回はあえてヒップホップにこだわって、その中でふり幅を出したいと思いました。
■ みなさんは実際制作に携わってみていかがでした?
Asuka: 楽器がひとつひとつ重なっていって、本当に曲がだんだんと広がっていくんですよ。その感じがすごく楽しかった。
Michitaro: 楽器が重なって膨らんだところに、ラップがのってもう一回リアレンジされる。始めは原型もまったく見えずに作っていたんですけど、最終的にはこうなるんだっていう驚きと楽しみがあって。そんな絵があらかじめ見えていた瀬戸君やChikaちゃんは改めてスゴいなって思いましたね。
■ オーケストラをやりつつ、Chikaさんは先日ソロ作品も発表されましたよね。
DJ Chika:オーケストラとは時期が若干ずれてたはずなんですけど、ソロがやっぱり押して、後半は制作が完全に食い込んでましたね。昼間ソロやって、夜は瀬戸と作って。
■ なぜこのタイミングにソロを?
DJ Chika: なんとなく(笑)。もう何年も前から話はあがっていたんですけど、僕はゆっくり作りたかったんですよ。でも結局作り出したら最終的にそうはいかなかったんですけど(笑)。
■ Cradleとソロで、意識するところはありましたか?
DJ Chika: 制作に関しては特に意識してなかったんですけど、出来上がってみると、やっぱり俺の色は出てるかなって思いましたね。ギターが多かったり、ディープだったり。
瀬戸: 確かにChikaっぽい。個人的にはある意味、次回作が楽しみですね。今回はChikaの色が完全に出てるだけに、次はどう変化するのか。何年後になるかわからないですけど(笑)。
DJ Chika:それは俺もわからない(笑)。ソロはあくまで自分のペースでやりたいし。自分さえ頑張れば作れると思うんですけど、他にもやりたいことはいっぱいあるんで、また地道に。とりあえず、今は制作が……。
■ それはオーケストラ?
DJ Chika:それも然り。
瀬戸:海外のアーティストとのコラボがあったり、色んなレーベルやアーティストからオファーは頂いているんですが、なかなかできなくて・・・。
DJ Chika:だから実はメンバー全員と会うことすら久しぶり。
瀬戸: 基本的にレコーディングも1人ずつしかできないしね。でも業務的に効率良く、早くやればいいわけじゃないし、わざと遠回りしてでも濃密な作業をしたいんですよね。メンバーは勿論、その他にも才能溢れるミュージシャン達とのコラボレーションで、確実に良いものが仕上がると思うので、ぜひ楽しみにしていて下さい。
www.palette-sounds.com
Text > Tadayuki Sugiyama
Photo > Kenta Suzuki
HIDDEN CHAMPION ISSUE#11 August, 2008