HOME > NEWS > Patrick Rocha Interview

Patrick Rocha Interview

Masha-2004+.jpg

カンザス州生まれ、NY在住。多くのドローイング作品でモチーフとなっている、輝く髪の毛を持つ女性と、迫力ある悪魔的なクリーチャー、対照的なイメージのどれもが繊細で美しいラインで描かれている。

■ 出身はどこ?
Patrick Rocha(以下 Patrick):1982年にカンザスで生まれて、18才までそこで過ごし、それからNYに移ってきたんだ。

■ どうしてNYに移ったの?
Patrick:高校生の頃は、まさか自分がNYに行くなんて、まったく考えていなかった。僕にはすごく大切な彼女がいて、彼女は高校を卒業し、NYのクイーンズにあるSt. Johns大学でジャーナリズムを専攻するために、カンザスから去ってしまったんだ。僕はカンザスに残ったんだけど、彼女のことが忘れられなくて、彼女のいるNYにあるPratt Institute(アート・スクール)に入学しようとした。遠距離恋愛ってすごく辛くてさ。それから、Pratt Instituteに無事に合格して、NYでの日々を過ごしたわけ。

■ 子供の頃は、どんな大人になりたいと思ってた?
Patrick:子供の頃は、ずっと俳優になりたいと思ってたな。映画自体が好きだったから、その業界で働いてみたいとも思ってて、映画監督もいいなあって。母親は家族で集まるといつも僕に、誰かの物真似をしてってしつこくてさ。当時はそれが恥ずかしかったけど、自分に注目が集まると楽しくなったんだ。子供がバカなことをやって大人から笑いを得るってリアクションが好きだったんだと思うよ。例えそれが、人を楽しませることであろうと、警察のお世話になるようなことだろうとね(笑)。僕はいつも誰かのために何かをしてあげたり、何かを作ったりする人になりたいと思ってたんだよ。



Face_of_a_Widower-2005.jpg
Face of a Widower (2005)

■ 絵を描くことに興味を持ったのはいつ頃?
Patrick:絵を描き始めたのは、すごく幼い時期で、たぶん6、7才ぐらいだったかな。最初にアートを探求したいと気づいたのは10才の時だよ。その頃から、父親の仕事に興味を持つようになったんだ。彼は僕たち兄弟、ルークとダニエルを、90年代初頭のカンザス・シティのアート・シーンの中で育ててくれたんだ。まだ小さかった僕らにとってみれば、それは普通の育ち方じゃないよね。僕ら兄弟は、両親がアート・ショウのオープニング・パーティで知り合いと懇談してる中を走り回って遊んでいたんだから。僕は父親の作品を見て、絵画の基礎を学ぶことができたんだと思う。それって、とてもラッキーなことだよね。

■ 一番影響を受けたのはお父さん?
Patrick:間違いなくそうだね。実は、父親とじ名前なんだ。親父は"Patrick Rocha Sr."で自分が"Jr."。父親は今もカンザス・シティに住んで絵描きをしている。でも、昔は歯科医を開業してたんだ。それに、1991年からは地元のニュース番組のために法廷画家もやり始めた。だから、父親は地元で有名になった犯罪者のほとんどに会っているはずだよ。数年前に、地元が一緒のアーティスト・Travis Millard(fudgefactorycomics.com)と帰省してるときに会ったんだけど、Travisが「お前の親父さんと一緒に殺人犯を描きに行きたい」って言うから、父親に頼んだら「一緒に付いて来い」って、丁度始まったばかりの裁判に、3人で行って法廷画を描いたこともある。父親は、僕を終わりのないクリエイティブという名のトンネルに導いてくれた素晴らしいアーティストだよ。

■ Pratt Instituteでは何を専攻していたの?
Patrick:主にイラストレーション。でも、学生時代に経験したPush Pin Graphic(NYの世界的に有名なデザイン・スタジオ)でのインターンシップの方が、学校の授業よりも多くのことを学べたと思う。インターンではほとんど一日中、Seymour Chwast(pushpininc.com)のアシスタントをしていたんだ。空いた時間ができるとSeymourの図書室に行って、レアなアート・ブックを読み漁っていたよ。ほかにも、Carol Chuの手伝いもしていた。彼女も素晴らしいアーティストだね。

Z_Bitches-2004.jpg
Z Bitches (2004)

■ 最近の活動について教えてくれる?
Patrick:今年は自分にとっても周りの友達にとってもいい年になってるよ。最近だと、ConverseのChuck Taylorの広告キャンペーンに作品を提供したし、Andreis Costaがキュレートした展示会を、フォトグラファーのLuke Barber-Smith(lukebarber-smith.com)と一緒にNYの"Invisible"でやった。それに、5月にデンマークで開催したグループ展"Highmath"(Arkitipが主催)にも参加した。今は、aNYthingのために限定のZine(ハンドメイド作品集)を作ってるところ。作品の傾向として、最近はペインティングよりもドローイングが主だね。ペインティングは、人々の反応を得やすい刺激的な仕事で、すごく素晴らしいと思うけど、言い方を変えれば、僕はペインティングを描くことができるからこそ、今はドローイングを多く描いているんだ。あとは、映画をたくさん見たり、"Dragon Tears"ってバンドでキーボードもやってる。

■ 影響を受けた映画や、バンドがあったら教えてくれる?
Patrick:それはいい質問だ! 相手を知る一番の方法は、その人の好きなモノを知ることだからね。それじゃ、僕のお気に入りを紹介するよ。映画だったら、『Star 80』『Fantastic Plantet』『Palindrones』『Anything By Harmony Korine』『Street Wise』『Magnolia』。音楽ならGodspeed、You Black Emperor、Andre Cymone、Topp Boom、Gyorgi Ligeti、Ariel Pink、Bruce Haackかな。好きな本もいい? 『House of Leaves』『American Psycho』『Middlesex』『Tom Friedman's Phiadon book』。これで少しは僕のことをわかってもらえた?

■ ドローイングのモチーフによく、美しい髪の毛の女性や、悪魔のようなモンスターを描いているのはなぜ?
Patrick:それぞれ、異なる角度や視点から見た"美"のアイデアだよ。女性や男性からは多くの美を感じるし、食べ物にだってそれは存在すると思う。簡単に言えば、自分はいろんなことに興味があるんだ。フレンチ・モデルのような女の子のポートレートも描くし、異臭が漂いそうで、今にも噛み付いてきそうな塊だって描く。自分でも時々、絵を見る人に同じ質問してみたいんだ。「どんな種類の美をあなたは認めることができますか?」ってね。アーティストは必ずしも、美しいイメージを描かなくてはいけないわけではないでしょ? 自分の場合は、90%は即興で描いているから、どこからアイデアが出てくるのかわからないけど、自分自身の中に存在しているイメージであることは確かだね。

Spike_Lee-2006.jpg
Spike Lee (2006)

■ 最近、気になるアーティストは誰?
Patrick:友達の作品にはとても共感するよ。例えば、James Blagden、Mike Farmer、Gary Fogelson。それにグラフィックデザイナーのHonestやHunter-Gatherer。去年、Mark Gonzalezと仕事をしたんだけど、それも素晴らしい経験になったよ。

■ Mark Gonzalezとの仕事って何?
Patrick:去年は友人のJonathan Cammisaといろんな仕事をしていたんだけど、Markがアシスタントが必要になった時に、自分とJonathanがそれをやっていたんだ。NYと日本のSupremeの店内にあるペインティングがそうだよ。SupremeのJames Jebbiaも素晴らしい人だね。MarkとJamesからは、ものすごく刺激を受けた。

■ 最後に、今後の活動予定を教えてくれる?
Patrick:映画『ポルターガイスト』から連想したシリーズ作品を製作してるんだ。それと、レコード・カバーや本のデザインのプロジェクトがいくつか進行している。今後の活動にも注目してて!

portrait-1.jpg
www.patrickrocha.com


Text > Tomoharu Koutsuka
HIDDEN CHAMPION ISSUE#07 August, 2006
 

Category :

Tags : , ,

BACK

NEXT