「シンガポールに移住を試みて、1ヶ月。ようやく私たちの生活も落ち着き、最強にハッピーです」今頃そうやってこのブログを書いてるつもりだったけど、まぁ、人生そんなに計画通りだったら苦労しないですね。正直来週どうなるかもわからないような状況で、足りない脳ミソを使いながら、調べながら、聞きながら、相談しながら全力を尽くしてどうにかしようとしている。そんな毎日。
私にクネクネボードの乗り方を伝授してくれたMerceDeath氏が、カレーの「手食い」を教えてくれたことをこっちでもよく話しのネタにしていたら、こっちのお友達が泥酔したついでに「シンガポールに来たら、Fish Head Curryを手食いしとかなきゃダメだろ!」と言うので、7人ぐらいでゾロゾロと向かった先は、Little India。雑な位置情報↓
シンガポール人が連れてってくれたのは、日曜日の夜のLittle India。インド系の労働者たちの唯一の休日である日曜日には、シンガポール中のインド人がここに集まるのだ。集まって、何をしているわけでもなく、ただ集まってる。真っ暗な路地が全てダークスキンの若いインド人男性で埋め尽くされる。みんなただ立って、しゃべってる。「日本の『花見』みたいなもんだ。飲んで、食べて、集まってる。」なるほど。インド人をかき分けて、案内してくれるシンガポール人の友人の後を追う。
到着したお店には、観光客も一切いなくて、メニューすらなかった。ここは現地の人に任せて、私たちは緑色のハンドソープで手を洗った。
Fish Head Curryっていうのは、昔インドの南のほうからシンガポールに移住してきた人たちが、中国系のシンガポール人の味覚に合わせて、当時は廃棄されてた魚の頭を使ってカレーを作ってみたら、大ヒット。今ではシンガポールを代表する料理の一つになってる。
魚のダシが効いたスパイシーなスープに、ネギとかパクチーとかハーブがたくさん乗ってる。脂っこさは一切なくて、カレーというよりはパンチの効いたアラ汁のよう。Red Snapperという魚だと言ってたけど、身はふんわりしてクセの無い、お上品な鯛みたいな味。神聖な方の手、右手だけを使って、ご飯とカレーを混ぜる。中指、薬指、小指をスプーンのような形にして親指でギュっと押して食べる。
手を使って、食べ物の温度や質感を触感で感じ取りながら、口の中に入れる。というのは、味覚以上の味わいがあるような気がする。普通のパラパラなご飯のほかにも、お餅のようなIDLIや、ナンもクレープみたいなのから丸いふっくらしてるやつまでいろいろあって、全部食べたい、というか手食いしてみたい。...触ってみたい!笑
さらにビールを飲んでグデングデンになった私たちは、そこから歩いてちょっと怪しい路地へと向かった。
狭くて暗い路地裏、建物の小さなドアからは真っ赤な光がぼんやりともれてる。その光の周りには、若いインド人男性たちがものすごい数で群がってる。Red Light Districtだ。
地元の人たちの説明によると、この労働者たちの月収はおそらく日本円で2万円程度。国に仕送りする彼らに、こういう大人な?遊びをするお金はない。だから、外から覗いているんだ。とのこと。暗闇の中で眩しく光るそのレッドなライトの先には、どんな美しい娼婦の方々が見え隠れしているのかしらとドキドキしていたんだけど、窓から見えるのは、プラスチックの椅子にデーンと大股開きで座る、中国系の...太っちょな熟女の方がいらっしゃるだけだった。(この瞬間、清野のブログのこのエピソードを思い出してしまった。)
若いインド人の男たちが大勢で、まるで虫のように群がって覗いている赤い光に照らされたドアの向こう。彼らの妄想の中では、私の目には見えない夢いっぱいのワンダーランドがそこに開いていることは間違いなかった。
なんか、こう、鼻につくほどの「活力」がメラメラしていた。
この男たちの両手が、この街の煌びやかな高層ビルを建てている。高級車が行き交う道路を建設している。仲間同士で握手する。肩を組む。そして、器用な指先でカレーを口に運び、触る事はもちろん、チラ見すらできない娼婦の夢を見ている。それでも「今」を最大限に楽しんでる。文句言ってたって、なんにも変わらない。そんなエネルギーを持った彼らの何十年後かは、とても明るいに違いないと納得してしまう。
生きなきゃなーと思う。