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Posted by @momomagazine

2008年の旅の記録

gmailの下書きに2008年の一人旅の記録が打ち込まれていた。まだ書いている途中だったのかどうかも覚えていない。

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デジカメもケータイも、そして自分の体力のバッテリーも限界を迎えそうな午後11時半。体の一部と化した15キロのバックパックを背負い、私はミラノのセントラル駅の大理石の階段を駆け上がっていた。宮殿のように高くそびえたつ柱が連なる向こう側は薄暗く、遠くで発車を待つ列車のヘッドライトが並んでボーっと光る。イタリア5日目が終わりを迎える寸前。静かなプラットフォームを一人で急いだ。

高く弧を描く天井の下に、もう人はほとんどいない。縦長の寝台車のチケットを、プラットフォームに設置された黄色いボックスに差し込むと、ガガっと鈍い音を立ててからチケットが飛び出す。23:40の印が押される。

チケットの記す寝台車両には、5部屋ほどあっただろうか。ネットでの予約の時に、「女性専用」のボックスにチェックマークをいれていた。2段ベッドが二つ並ぶ部屋は、3畳ほどのスペースに四角い窓が一つあるだけ。となりに陽気なイタリア男でも寝ていようものなら、どんなに疲れていても電気を消す勇気もなかっただろう。

ミラノからナポリ、約10時間の旅。寝台車のベッドは、思ったよりもずっと快適で、部屋のドアが閉まると、私はアイロンのびしっとかかった白いシーツの間にうずくまり、電気が消されるとすぐに眠ってしまった。どのぐらい時間が経ったのか、体を起こしてみると真っ暗闇。列車と線路がこすれる音と、私の下で眠るイスラム系の中年女性の低いイビキだけが、心地よく重なっていた。窓の外は暗く、遠くに星が見えたような気がしたけど、よくわからないまま、また眠りにおちた。

ベッドの下から、慣れた様子で絵本を読む男の子の声が聞こえくる。何語なんだろうと考えているうちに目が覚める。窓の外は明るく、少しだけ黄色くなりかけた草むらの手前を、小さな家々がポツポツと流れていく。寝台車の朝。イタリアに来て一番すがすがしい朝。

ナポリに着く前に、指輪をバッグの奥底にしまった。目的のあの場所に着くには、スリや強盗で有名なナポリを通らなければいけない。それでも変にわくわくする。自然と歩くペースが早くなる。

人だかりのバス乗り場を通り越し、万全を期して乗り込んだタクシーでは、見事にぼったくられて唖然。メーターが動いていないことに気づくのがあまりにも遅すぎた。降りる直前には、ミラノのタクシーの相場の約5倍を請求された、というかカツ上げされたのだ。イライラしているのがもったいないぐらいの青空の下、早歩きで港からフェリーへ。

約一時間後。カプリ島に降り立つ。

マリーナ・ピッコラは、そのまま「小さな浜辺」の意味。ホテルの予約は、船で降り立ったすぐ先の小さな観光案内カウンターのお姉さんにお願いした。一人で泊まるにはちょっと贅沢過ぎるけれど、泳げる海の近くのホテルをとお願いした。一泊するつもりで、チェックイン。久しぶりのシャワーを浴びている間に、デジカメを充電。外へ飛び出す。ビーチは小さいながらも人でにぎわっていた。透き通る海水が信じられない。数時間ボーっとした後、ケーブルカーに乗り、島の中央部の高台へ向かう。ジェラート食べたり、パニー二食べたりしてフラフラしているうちに、はっとするような美しい時間が訪れた。あまりにも美しい景色を見ると動けなくなる。真っ青な夕暮れに、白い家々のあたたかい光がちらつく頃、もう一泊しちゃおうと決めた。

momomagazine 789.jpg*****

こんなに長々と細かく記録しているのに、当時のブログには全く違うトーンでサラサラっとアップしていた。gmailの下書きに記録をしておいて、忘れてしまうことが何度もあるのだけど、誰に向けてでもなく、こうやって未来の自分に発見してもらうのを待っているのかとも思う。イタリアに今とてつもなく行きたい。

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